『吊り橋』で出会う
しばらく、コーヒーをすする無言の時間が流れた。

「ところで、あなた・・・」
「マモル、真北守。あなたは?」

「篠崎。・・・ユキ」
「ユキちゃん・・・」

久しぶりの呼び名に、思わず鼓動が早まった。

「どうして、オレがあの暗闇の中、迷わずユキちゃんの元に行けたと思う?」

カップを置いて、伏せ目がちなマモル。

しかし、ややあって、答えを促すようにしっかりとユキを見つめた。

ドキッとユキの心臓が音を立てた気がした。


「・・・直前に、見かけたからでしょ?」


心臓がドキドキする・・・。


「・・・『ずっと』見てたから。いつか、声かけようと思って」


「!」


それって・・・。


見る見る赤くなって固まってゆくユキにほっとしたように、マモルは続ける。


「今日声をかけたはいいけど、正直こんな状況で声をかけるとは思ってなかった。策士みたいだろ?困ってるとこ利用して」


恥ずかしさにユキは何も言えない。


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