『吊り橋』で出会う
相変わらず二人の手はつながれたままだった。

いい年をした大人が手をつないでいたら、そんな二人の関係は大抵決まっている。

そういう関係でないにも関わらず、手をつながれたままユキは歩いていた。

普段のユキだったらとうに手を振り払っているし、まさか出会ったばかりの男性に着いて行ったりもしない。

ユキは大人になっても基本的に人見知りだ。

こんな自分の意外な行動は、さっきのハプニングの余韻が続いているからだとユキは思う。

心臓が不安感の名残でドキドキしているが、返ってそれが心地よかった。

ユキは歩きながらこっそりと男性を見上げた。

意思を持った眼差しがキレイだと思った。

男性の手はやや骨張った繊細そうな長い指で、ユキの手を包み込むには十分大きく、暖かかった。

つながれた手の暖かさに、ユキの不安感は急速に薄れた。


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