『吊り橋』で出会う
こぽこぽという音と共にコーヒーの雫がデカンタに垂れる。

「あの本屋から近くて便利でしょ?オレの会社はあのビルの近くだけど、依頼があれば時々本業の帰りにこの部屋に寄るんだ。で、バイト終わって本屋に寄ったら、あれだ」

あれとは、さっきの落雷停電のことだ。

ユキは本屋での出来事を思い出す。

ユキは男性と面識はない。

それなのに彼はユキに声を掛け、こんなところまで連れて来た。

本来は礼を述べておかしくない状況だが、彼の考えていることがわからず素直に感謝できない自分がいた。

「そうなんだ」

ユキは曖昧に返答した。

聞きたいことは山ほどあった。


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