『吊り橋』で出会う
そんな雰囲気を察してか。

「オレは、前から見かけて知ってたんだ、あなたを」

カップにコーヒーを注ぎながら男性が言った。

「え?」

「オレもあの本屋の常連だから。あなたはいつも本ばっかり見てるから気づいてなかっただろうけど」

彼は向かい側のソファに座り、どうぞと言ってコーヒーを差し出した。

「・・・勝手に、知り合いの気分になりまして」

目を見開いたままのユキの視線をややうつむいて交わしながら男性が言う。

「・・・だから、放っておけなかった」


彼からすれば自分は見ず知らずの人ではなかったから。


「そっか、ありがと」


やっとユキは心からの笑顔を向けた。




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