トリップ
(おお・・・空手役に立った・・・)
今まで使った事などなかったが、改めて習っておいてよかったと思う。
すると、相手が腕を緩めて小声で囁いた。
「バカッ、俺だよ、俺ッ」
妙に聞き覚えのある声。
上を見てみると、長い茶髪の間から綺麗な青いに瞳がのぞいている。
「あ、ケイラや。」
「やっと気付いたのかよ。」
呆れ顔でケイラが腕を放した。「いきなり肘打ちしてきやがって。」
「あー・・・ゴメン、呼吸困難になりかけて・・・。」
「悪かったよ。引きずり込んだらたまたま触っちまったんだって。」
しかめっ面をすると、急にケイラが周りを見回した。
何やら焦っているようにも見える。
すると、向こうの方から荒々しい声が聞こえた。
「どこだぁ!」
その声にキャプテンは一瞬驚いた。
後に続いてなだめるような声が聞こえる。
「落ち着け。周囲にばれたらどうする。まずは見つけることが先だ。」
「ちっ、分かってる」
何をそんなに焦っているのか、苛立った声を出しながら彼らは去っていった。