トリップ

東京の嫌な所は、夏に紫外線が強すぎるところだ。
コンクリートからの発熱やガラスに反射した日光が目を潰す様に思える。
それなのに周りの女性の肌は白く、この紫外線を浴びてもこの色でいられるとは思えなかった。
・・・そうか。日焼け止めを塗っているからか。

たまたま日焼け止めの宣伝が目に入って思う。
私はあまり化粧品などを使うことがないため、人よりも少し黒い。
ここにいるともっと黒くなるだろう。

岐阜の夏祭りで貰ったうちわを動かしながら、学校を目指した。
多分冷房は付いているだろう。

学校に着くと、私は図書室に向かう前に剣道部を通りかかった。
剣道の道着も暑そうだ。
女子たちの黄色い声が飛んできた。

「?」

一体何事だ。
私はそう思いながら剣道場による。
道場の中では丁度試合が終わったのか、2人の生徒がお互いに礼をしていた。

「やっぱ高木君カッコイイー♪」
「イケメンだし、勉強も出来るし。」

うおっ・・・
出た。今時流行りの「王子様系」というものだろう。
どの携帯小説を見ても、恋愛の話には必ず出てくるパーフェクト人間である。
顔はともかく、性格の問題だろうと私は思うが、余計な口出しはしてはいけない雰囲気だったため、そのまま立ち去ろうとしたそのとき、後ろから声をかけられた。

これは嫌なルートに入り込んでしまいそうだ、と私はこの瞬間に感づく。



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