トリップ
パソコンに向かって文字を打っていると、私はジュマの書いている小説を覗き込む。
見てみると、正統派の小説というより携帯小説に近い文章。
それはそれで可愛い。
私が覗き込むと、ジュマは私の小説を覗き込む。
「難しい言葉が多いですね。」
「まあ。正統派の小説のほうがカッコイイやろ?」
「同感ですね。」
でも、君のは携帯派になってるよ。
そう言おうと思うが、相手を傷付けかねないため、口には出さない。
すると、さっき覗いた場面を指差して、ジュマが言った。
「キャプテンさん、麻痺毒が作れるのは蛇じゃなくて蛙ですよ。」
「!?・・・ああ、サンキュー。」
普通よりも毒の事には詳しいつもりだったが、まさかの指摘。
ジュマのほうが詳しかったのか、それとも偶然か。
・・・私は結局偶然と考える事にした。
毒を詳しく知っているなど、まるで人を殺す仕事でもしているみたいだ。
・・・・・・・・・・
部活が終わり、また暑いコンクリートの上を歩く。
こんな所で何故自販機が無いのか不思議に思える。
砂漠にいるような気分になりすっかり疲れ果てた私は、公園のベンチに座り込む。
本当に酸素を吸っているのかというくらい息苦しい。
寝てしまおうかと目をつむったそのとき、左頬に氷のような冷たい感触がした。