トリップ
芽生えた感情

時、ついに本番へ。


今日がオーディションの日。
エリカは十分に睡眠を取ったようでピンピンしている。

―今日のためにと頑張ってきたんだ。
練習のし過ぎで突き指していた指の部分を見る。

「先輩は・・・おるんかな?」
無意識にそう呟いてしまう。
期待している気もあった。何故そう思ってしまうのかと自分に問いかけるが、勿論答えは来ない。

着替えて外に飛び出すと、急いで学校の方に向かう。
学校についてから志望者が全員集合してから本場に向かうのだ。
校門をくぐると、すぐ右の木にリクがもたれかかっている。
相変わらす冷たい表情でこちらを見すえている。

「・・・その表情やと・・・やっぱり仕事でここに・・・」
「それ以外にこんな所に俺が来ると思うか?」

確かに、と思いつつも校舎の方を見る。
10人ほどの生徒が集まっている。

「皆頑張っとるんやね。」
「・・・少しは警戒心を持て。あの中の誰かが裏社会とつながっていて、今回の死亡事件の引き金かもしれない。」
「・・・。」

明るい気持ちだったのだが、一気に不安に変えられる。
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