トリップ
そのとき、リクの目が一瞬大きく揺れたように見えた。
「誓ったって・・・誰に?」
「それは言えない。同僚にも誰にも言ってないんだから。皆知ってるだろうけどな」
(・・・まさか・・・)
想い人か誰かだろうか。
その人が殺されたから殺し屋を恨んでいるのだろうか。
それなら、それだけの恨みを持っても、分かる気がした。
エリカは胸ぐらの服を握り締める。縄で締め付けられるような感覚が襲った。自己の苦しさではなく、リクの苦しみ、他人の苦しみが伝わるように、だ。
(あれ・・・?何でまた・・・。)
変なの。
自分で疑問に思いながら服を掴んでいた手を放す。人の身の上話を聞くと、いつもこうなるのが不思議だな、と思えた。
「・・・君は好奇心旺盛なのか?」
「はぃ?」
いきなりそんな事を聞かれ、先程の妙な感情が吹き飛ぶ。
「何で・・・!?」
「色々探ってくるからさ。俺のことを。」
「いや、それは・・・」
「守り屋に深入りしない方が利口な事は、君も痛い思いして理解しているだろう?」
「そりゃそうやけど・・・」
リクはフッと笑ってエリカの額を指でなぞる。
夏というのに何故か氷のように冷たい指に触れられ、ついビクンと跳ねてしまい、ギャヒン、と言いそうになる。ゾゾゾッと鳥肌が立った。
「切ったのは・・・この辺りだったか。」