トリップ
以前につくった頭の傷の事だろう。
リクが指を放すと、エリカは顔を火照らせる。
「何だ。褒めたわけでもないのに照れるなんて。」
「いやいやいや、そっちの照れるやなくて・・・!あの・・・友達とか家族以外の人に触られたのは初めてというか・・・」
「触る・・・!?・・・君まさかそんな趣味が・・・」
「ちゃうて!」
余計に顔に熱がこみ上げてくる。
そんな中、リクは携帯電話で時間を見る。
「あ。・・・少し時間に余裕がなくなってきた。歩くぞ。」
そう言うと、リクはエリカの手を掴んで引っ張った。
手を繋いだまま、リクは早歩きする。
「ひゃっ」
つい奇声を上げてしまった。
周りの目を気にしてついて歩く。
「あの・・・先輩、ちょっと早い・・・」
「問答無用だ。」
エリカの言葉を遮ってきっぱり言うと、ほとんど引きずるようにテレビ局に歩いて行った。