トリップ

リクに引きずられながら、エリカはジッと繋いだ手を見つめる。

手を繋いでいる。

心の中でその言葉を繰り返すと、不意に興奮してきてしまう。
リクの手が離れないように、なぜか握る事を意識した。
繋いでいると嬉しい。安心する。
エリカの中にそんな感情が現われ始めた。

「先輩は・・・温かいんやね。」
「・・・何がだ。」
「よく言うやん。手の冷たい人は心が温かいって。」
「・・・そうでもない。でなきゃ殺し屋といえど人が殺せるわけ無いだろう。その教えは嘘だ。」

まあ、そうやけど。
エリカは内心で答える。
すると、リクが「それに」と一言付け足した。

「君は優しいのに・・・手が温かい。」

そう言った後で「本当に温かい。」と繰り返す。
まるでその言葉にこだわっているかのように聞こえる。

「俺と君は、対照的だな。」
「?何が?」
「君は手も心も温かいが、俺は手も心も冷たいから。・・・あと、身長でも。」
「!!?うちがチビだと・・・」
「まあな。」



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