トリップ
「あの人は・・・」
「俺が相手しておく。君は遅れるな。」
男についていきつつ、こちらを振るり向いて言った。
「親の手助けをするんだろ?」
それだけ言うと、リクはエリカの背を押して背を向けた。ひき止めようとしたがその手は跳ね除けられ、リクは首を横に振る。
「あの・・・」
「大丈夫、安心しろ。絶対に勝つ」
「そういうことじゃなくて」
「何だ」
「・・・無理しんといてください」
リクは驚いたような表情をして、目を開く。こんな事を言われたのは初めてらしい。
「君ー!早くしなよー!」
「・・・今行きますよー!」
男の声に、リクは無理矢理元気な声を出した。
・・・・・・・・・・
「あれ?女の子の方は?」
階段を降りた暗い地下室で、笑顔で男が言う。
「君知らない?女の子の方。」
「逃がした。」
「・・・え?」
「ここでオーディションなんてするわけ無いだろ。彼女は本当の場所に逃がした。巻き込まないようにな。」
「・・・何を言ってるんだい?」
冷や汗をかいて急いで階段を上がろうとする男の手をを、リクは焦ることなく捕らえる。
「どこに行く。」