トリップ
コンビニを出ると、私は先ほどの死体がどうなったかを確認しにビルの下に向かう。
あの男の周りは今も人だかりが出来ており、静まる様子はない。
―守り屋は来てないみたいね。
そう判断すると、周りの警察や報道陣に目を向ける。
「男性の倒れている方向から、警察は10時の方角の建物から何者かに射殺されたと断定している模様です。しかし、殺害したと見られる人物は見当たらず、10時の方向のビル一帯には、怪しい人物も指紋も見つからなかったと言う事です―」
良かったと思いふぅと息を吐く。
今まで私の犯行は誰にもばれた事が無い。
今回もうまく言ったと確認すると、私はその場から立ち退こうとした。
その時だっただろうか。
グイッと強い力で引かれ、私は力なく連れて行かれる。
今までこのように無力に連れて行かれたことなど、抵抗が通用しなかったことなど一度もない私は驚いたまま引きずられていく。
たぶん、相手は相当の力があるだろう。
そのまま連れて行かれたのは、もう廃置となった工場。
私を奥の方に押し出すと、相手は工場のドアを閉める。
―変なことするつもりなら、いの一番に頭を打ち抜いてやる。
そう思っていたが、どうやら違うようだ。
というのも、相手が妙に急いでいるようすがないからだ。
「さっきの死体は、銃殺らしいな。」