トリップ
剣道場を通過すると、やはり女子の黄色い声が聞こえて来た。
「高木君最高ー!」
「一度話してみたいなー!」
そんな会話が耳に入る。
(やめとけ、しつこく聞かれるぞ、色々と。)
そう思いながら早足で剣道場を抜けようとする。
すると、いきなりジュマがこんなことを聞いてきた。
「キャプテンさんって、高木先輩嫌いなんですか?」
「嫌いというより、いけ好かへん。」
「変わってますね。あんなカッコイイ人を見ても一目惚れしないなんて。」
「うちはジュマのほうがいいと思うんやけどな。」
キャプテンがそう言うと、ジュマはビックリして慌てふためいた。
「キャプテンさん…!冗談はやめてくださいよ!」
「いや、そういう意味やなくて、うちが言いたいのは、お前は顔が可愛いからいいって言いたいの。女の子みたいやし。」
「はぁ…女の子…」
「もっと言えば、性格だって明らかにジュマの方がいい。あんなしつこい奴は嫌われんはずなんやけど。」
「私、そんなに好かれてませんよ。」
「それは君のむっつりが邪魔しとるだけやて。」
「むっつり!?それ、ある意味私がスケベだって言いたいんですか…!?」
「そうやよ」
「え゛ぇ!?」
「冗談やて。本気にしんときやー。」
陽気に笑うキャプテンお隣で、ジュマが頭の中が整理出来ていないらしく、まだ慌てている。