トリップ
あまりに鬱陶しくなり、ケイラは声を強める。
「話戻すけど、俺は独り言は好きじゃねぇし。」
「さっき言ってたじゃない。」
「たまにだよ。」
ふうん、と坂見が横目でケイラを見る。
「そのことなんだけど、あんた、独り言で言ってた『お前』って、誰の事?」
「……ッ!!お前、聞いてたのかよ!」
「丸聞こえよ。」
悔しそうな顔でケイラが坂見を見る。
「で、誰の事なの?」
「テメェに教えたら、この先佐野に一生いじられる。」
「何、いじられるほどヤバい事なの?」
「…」
ばらせない。
そう思いながら黙り込むと、坂見は諦めて息を吐いた。
「ま、それ程のもの何て、あんたにはいないと思うけど。」
それだけ言うと、坂見はケイラに背を向けた。
「じゃ、アタシは昼からカレとデートだから。」
楽しそうに言うと、坂見は事務所を出て行った。
「何て呑気な情報提供者だよ…」
そう呟くと、ケイラは下を見た。
髪を染めたギャル系の高校生が歩いている。高校生を見ると、不意にキャプテンが思い浮かんだ。
「アイツ…暇かな?」
そう呟くと、ケイラはキャプテンの携帯に電話する。
しかし、かけてみたがどうやら電源が切ってあるらしく、かからない。
「…何でかからねぇんだよ。バカ」
何に向かってバカと言っているのかも分からず、携帯を閉じる。