トリップ
「誰アレ、イケメン!」
「目ェ青色だし、ハーフかな?」
そんな会話が聞こえて来た。
「彼氏?」
「嘘!?だって、キャプテンって彼氏作らないって…!」
彼氏…。
その言葉を聞いて、キャプテンは真っ青になった。
「違う!大きな誤解だ!」
「おい、こっちの話も聞けって。」
ケイラに言われ、ムスっとしながらキャプテンはそちらを向く。
「何?」
「何で電源切ってんだよ。」
「何ィ!?まさかそれだけでここまで来たんか?!」
「ああ。」
(え゛ぇ!?)
あまりに意外な理由に、キャプテンは顎が外れそうになる。
「いや、普通電源切っとくやろ。授業中に『ピロピロ〜♪』何て音がしたら、たちまち注目の的やんか。」
「いいじゃねぇか。目立って。」
「うちは嫌なんす!だから電源切ってあんの、お分かり?」
「ちぃ……」
せっかく来たのに、とケイラが頭をかく。
「ってか、何でここまでして逢いに来たの?」
「……分かんねぇけど、逢いたかったから。」
その言葉にキャプテンは首を傾げたが、他の女子たちはどうやら「胸キュン」したらしく、黄色い声を上げる。
たまたま近くにいた教師が、ケイラに気付き、こちらに寄る。
「誰だね、君。どこの高校の生徒?」
「〜名前は言えねぇけど、神楽坂高校中退。」
中退、と聞き、教師は青ざめた。そして、ケイラの荒れた服装を見ると、すぐにケイラの手を引いて玄関の方に連れていく。
「あっ、おい!」
いきなり手を引かれ、ケイラは抵抗しようとしたため、キャプテンが急いで言った。
「また後で会おう!な、それまで待っとって!」
「…じゃ、マンガ喫茶にいるからな!」
それだけ言うと、ケイラは教師の手を跳ね退け、自分から出て行った。
「…一難去ってまた一難か。」
皆の誤解を解くことを最優先することを試みるキャプテンだった。