トリップ
「ナンパって、男が女にするだけやないんやね、男がされるところ、見たことないけど。」
「ナンパねぇ…」
チャラい奴がするアレだろ。
ケイラがそう言うと、キャプテンはコクリとうなづく。
「お前もナンパには気を付けろよな。」
「大丈夫やて、こんなブスでキモい奴なんか、誰も誘わんと思うし。」
謙遜と言うよりは、自分の本当の姿を明かすような口調だ。勿論、本当に可愛いわけでもないのだが。
「都会って性的な犯罪も多発してるからさ。」
「ちょ、うちのツボに入るような台詞言わんといてよ。噴き出す所やった。」
「ホントに下ネタ好きだな。」
「好きやよ。」
「…でもアレだ。もし変な奴にされそうになったら、真っ先にぶん殴れ。」
「言われずともそうするて。でも、何でそんなこと言うの?」
不意を突くようにキャプテンが言うので、ケイラは言葉を詰まらせたが、少し黙り込んでからキャプテンを指差しながら言う。
「お前はちゃんと、狙ってる奴がいるから」
調子に乗ったような事を言ってしまったか。
不安だったが、意外にもキャプテンはそういう言葉の意味を知らないらしく、首を傾げた。
「なにそれ、狙っとるって何が?」
「……いや、何にも」
こいつ、やっぱ鈍感女!
悪態を心の中でつきながら、残りの道をキャプテンと歩いた。