トリップ
楽しそうに会話するエリカと美喜の姿を、リクはただ冷たく見据えるだけだった。そんなリクと目が合った美喜は、普段とは違う険しい顔付きになり、その場を去る前に笑顔を作った。
「じゃ、アタシ知り合いと来てるから!」
「うん、バイバイ。」
可愛らしく微笑むと、美喜は少し前の角を曲がった。それと同時だろうか、リクも同じ方向へ走り出した。
「えっ?先輩…」
エリカの言葉も聞かず、リクはそのまま美喜と同じ道を走り、先程の角を曲がって行った。
「行ってまったし…」
エリカは、渡すはずの物が入った鞄を見ながら呟いた。
………
角を曲がると、リクは鍵の開いた倉庫に目をやる。誰も立ち寄らない倉庫は、段ボールが山積みになり、小さな電球ひとつだけが灯っているため、とてむ薄暗い。
段ボールに隠れながら奥の広い空間を見ると、3人の人影が見える。
「そう、コイツ。わかりやすい顔してるからすぐに分かるよ。」
「ここに連れ込んで殺すか?」
「好きにしていいよ。」
目を凝らして見ると、依頼人らしき女が見えた。見ると、リクは「やっぱりね」と勝ち誇ったように思う。
(俺の想定内だ。)
生徒と例の依頼人の事を調べていたかいがあったな、とリクは隠れて女の顔を見た。
(美喜とか言う女、やっぱりアイツが黒幕か。)
先程とは想像がつかない姿だ。
女って怖いな。
そう思っていると、美喜の近くにいた二人の男がこちらを見て言った。
「あそこに隠れてるガキは、殺していいか?」
ばれてたか、それも想定内だが。
頭の中で呟きながら素直に3人の前に出た。