トリップ
コンビニで買った弁当を思い出し、不意にそんな言葉が漏れる。
横から刺さるケイラの視線も、出店に寄っていく若者達の声も聞こえなかった。ただ聞こえるのは、友達の笑い声。
ギャル系女子の世間話もあれば、おっとりっ子の日常話。そんな会話だった。
「キャプテン」
ケイラの声で、キャプテンは過去の記憶から現代へを引き戻される。
「何」
「どうしたんだよ。また妄想か?」
「いや、今のは違う」
思い出しとった、と花火を瞳に映しながら呟く口調で言う。いや、ほぼ呟いていた。
「やっぱり、いいな」
「なにがだよ」
「いやさ、親しい子が近くにおってくれると、安心するやん」
「その『親しい子』の中に俺は入ってんのかよ」
キャプテンは大きくうなづく。それと同時に、後頭部からあのマニアックな面が姿を見せた。