トリップ

「あの子が寝てる間に、砂浜の近くに置いて来たのよ」

相当悔やんでいるらしく、泣き声になっていた。
―本当、馬鹿な親ね。

「捨てたのが15年前だったから・・・生きていれば、立派になってたかも」

生きていたらの話など聞きたくもない、と私は途中で電話を切る。

「あの人」は好きに嘆き悲しんでればいい。
私はそう思いながら写真を見つめる。

「あんな人に捨てられて、一緒に話せるなら思い切り愚痴を言い合いたいわ」

母親の愚痴を。
きっと分かってくれるだろうと、私は考える。

・・・

ハッとして目が覚めた。

夢か、ビックリした。私は布団から起き上がって、夢のことを思い出す。いや、夢と言うより、「過去」と言うべきだ。

『立派になってたかも』

夢の中での、あの嫌いな母親を思い出す。

―立派とか言う前に、まず「死んで謝ってあげたい」とか言うべきじゃないの?







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