トリップ
都会の人間は皆冷たいというイメージを持っていたが、ジュマやこの女教師のような温かい者もいるのか。
悪く考えすぎたな。申し訳ない。
キャプテンは苦笑しながら職員室まで用紙を運んだ。無理をしすぎて荷物を多く持ってしまったのか、職員室に着く頃には、普通より筋力のあるキャプテンの腕が腫れそうになっていた。
職員室に入ると、教師やそこにいた生徒が見える。
国語の教師の前にはジュマが立っていた。あの真面目そうな少年が何の問題を起こしたのだろう、とキャプテンは何が起こったのかを予想したくなる。
「あれ、キャプテンさん。」
「何やっとんの?」
「いえ・・・その・・・」
ジュマは目を泳がせる。ふと教師の手に目をやると、赤ペンで「C」と書かれたプリントがある。何となく想像がついた。
「C取った事注意されとんの?」
「ううっ・・・はい。」
Cとは、Aの反対で一番悪い評価なのである。キャプテンは思わずどんな文章を書いたのか確かめたくなってきた。
きっと、文芸部で書いていた携帯小説に似た文章をそのままで書いてしまったのだろう。その文体は、授業ではほとんど通用しない。
しかし、成績優秀そうに見える彼の意外なにがれなものを発見した気分になり、思わず「ドンマイ」と声をかけてしまった。
「ドンマイじゃないですよ~」
下っ端気質らしい声で、ジュマはシュンとしたように言った。ドジっ子なヒロインろ見ている気分になる。