トリップ
黒い男
クラスに入り、自己紹介を終えて昼休みになったとき、エリカは学校の中を探検していた。
というより、そうしないと校内が分からないからだ。活動中に迷っては恥ずかしくてたまらない。今のうちに、覚えられる所を覚えておこう。
「あと理科室だけか。」
音楽室も美術室も全部見た。この学校は人数が多く大規模なので、校舎が無駄でかつやたら広い。理科室につくまでもやっとだ。
あとは理科室だけ、とエリカは足を運ぶ。
理科室を探していると、突然北の方から椅子の倒れる音がする。
「なんだなんだ」と驚きつつも音のするほうに向かってみると、理科室に辿りついた。
(意外と近くにあった・・・)
あの音が聞こえてなかったら、迷っていたかもしれないな。そう思いながら理科室に入ろうと思う。
中をのぞいてみると、誰かが倒れたいすを直していた。
男で背は180以上あり、漆黒の長い黒髪はチリチリとクセ毛になり(クセ毛にも見えるが、パーマに似たウェーブと言った方が正しいだろう)前髪が特に長く、痩せている。
瞳は髪の毛と同じ漆黒で、どこか黒いオーラを漂わせていた。
鼻は整った形をしており、目は黒い色をしているものの、普通より大きい。簡単に言えば綺麗な容姿だった。
「・・・誰だ?」
太く低い声が貫禄を漂わせ、黒い目で見られると、何故か鎖で縛られたような感覚になる。
「あの・・・今日転向してきた一年の・・・・」
「そうか。」
エリカが言う前に彼が即答する。
一瞬教師かと思ったが、制服を着ていたので、ここの生徒なのだと気付く。