トリップ
そっと腰のナイフに手をかけた。暗がりの中で声がする。
「まんまと引っかかるなんてな。依頼人で釣ったのは正解だ」
焦らず、冷や汗をかきながらも声のしたほうを見た。正確には見えないが、手にかぎ爪にような物をつけている。
「守り屋?」
「あ、やっぱり分かってたか」
月の光が当たる位置まで相手が歩み寄る。狐顔の男、小久保が歩み寄ってかぎ爪を光らせた。
「思ってたりもチビだな」
4メートルほど離れているのにも関わらず、ケイラは見下された気分になる。いつもなら逆鱗に触れる言葉だが、ケイラはそれを押さえて冷静に周りを見た。
(ざっと7人くらい・・・やるしかねぇか)
勝てるという期待はあまり無かった。何よりも小久保はあの中では強そうに見え、一番てこずりそうに見える。