トリップ
こちらでは能力が唯一の助けにはなるかもしれないが、こうも大人数で来られては戦えるかどうかも微妙な所だ。
そう思っている間にも、敵は動き出す。
少しばかり体格のいい男がよく磨かれた真剣を振ってくる。横に振られた剣をかがんで避けると、床に手をついてつま先で思い切り男の顎を蹴り上げた。
ガチン、と言う音が男の口から聞こえる。歯と歯がぶつかったのだろう。
足で立った時に棒を振り上げてきた男が首を見せる。ケイラは振り向きざまにナイフで首をかすめた。男に痛みは無かっただろう、何が起こったのだと言いたそうな顔で倒れた。
その時、横腹に切られるような痛みを感じる。いや、ようなと言うより、切られた。
男が倒れた時、その男の後ろにいた小久保のかぎ爪がケイラの横腹を切り裂いたのだ。