トリップ
急に足に力が入らなくなり、ガクンと膝をついた。どんどん視界が暗くなる。まるでじわじわと攻められている気分だ。
まだあのマンションから遠ざかりきれていない。何も異常が無ければ即効で走り去るのに、とケイラは悪態をつく。
近くの電信柱にもたれかかりながら、震える手で掴まる。「もうやばいな」とは体に痺れが来た頃から分かっていたが、悪化するとは考えもしなかった。
すると、ガササッと荷物を入れたビニール袋が落ちるような音がした。誰かに見つかったらしい。
しかし、視界を明るくしたケイラは、痺れなど忘れて「ふざけんじゃねぇぞ」と天に向かって吠えてやろうかとも思った。
「何やっとんの・・・?」
聞き覚えのある方言が、ケイラの耳を貫く。