トリップ

(しっ、しまったぁぁーー!!)

私は白目を剥くと大急ぎでケイラを運ぶ。彼は私より軽かったようで、本気を出せば十分に持ち上げられた。
途中、何となく視線を感じるが、気にはならなかった。

ケイラを担いだままマンションまで駆け上がり、兄弟が風呂に入っている事を確認すると、大急ぎで自分の部屋に運んだ。

こんな怪我をさせるほど、私はグロテスクな小説を作ったようだ。

「こんな危険なストーリー、よく書いたもんやわ、うち」

これからどうなるんだ、それしか頭に無かった。



次の日の朝、先に目を覚ましたのはケイラだった。下手な手当ての跡を見て、助けられてしまったのだと気付く。
その横でキャプテンが寝ていたので、ドキンとして跳ね上がってしまった。

昨日の服のままで、仰向けになって寝ている。
起き上がろうと思ったが、キャプテンが寝ぼけて傷口に向かって「とどめっ!」とチョップを食らわせるので、痛みがぶり返してくる。

< 249 / 418 >

この作品をシェア

pagetop