トリップ
(しっ、しまったぁぁーー!!)
私は白目を剥くと大急ぎでケイラを運ぶ。彼は私より軽かったようで、本気を出せば十分に持ち上げられた。
途中、何となく視線を感じるが、気にはならなかった。
ケイラを担いだままマンションまで駆け上がり、兄弟が風呂に入っている事を確認すると、大急ぎで自分の部屋に運んだ。
こんな怪我をさせるほど、私はグロテスクな小説を作ったようだ。
「こんな危険なストーリー、よく書いたもんやわ、うち」
これからどうなるんだ、それしか頭に無かった。
―
次の日の朝、先に目を覚ましたのはケイラだった。下手な手当ての跡を見て、助けられてしまったのだと気付く。
その横でキャプテンが寝ていたので、ドキンとして跳ね上がってしまった。
昨日の服のままで、仰向けになって寝ている。
起き上がろうと思ったが、キャプテンが寝ぼけて傷口に向かって「とどめっ!」とチョップを食らわせるので、痛みがぶり返してくる。