トリップ
そう言ったとき、ケイラがギロリと睨みつける。どうやら、軽んじて言って良いことではないのだとキャプテンはようやく気付く。
「もし、お前が俺を助けた所を見られてたら、あいつら、確実にお前まで狙ってくる」
「ああ・・・そう」
「これで分かったろ。お前が今、どんだけ危ねぇ状況に置かれてるかってこと」
「うーん、一応理解は出来たけど『見られとったら』って話やろ。見られんかったら何も無いやろう」
「おい、あいつら甘く見てんじゃねぇぞ。死ぬかもしれないからな」
「うん。悪くしたらケイラみたいになるわ」
笑わせようと思って言ったが、彼には返って内面的なダメージを食らわせてしまったようだ。
「あ・・・ああ、ゴメン」
様子を覗いながら謝るが、ケイラは唇を噛み締め、決勝戦で負けたスポーツ選手のように拳を強く握り締めていた。
(守り屋に負けたことが、そんなに悔しかったんかな・・・)
ケイラの性格なら、そりゃ分かるけど、とキャプテンは思う。だがその考えは、ケイラの悔しさの意味にはひとかすりもしなかった。