トリップ
・・・ケイラSide・・・
くそっ、何つうザマだよ。
ここが密室なら、今頃血が出るまで拳を壁に叩きつけていただろう。それくらい悔しかった。同時に悲しさまでこみ上げてきて余計に悔しい。
確かに、守り屋に負けたことも悔しい。だが、それよりも、キャプテンに助けさせてしまったことがひどく悔いになる。
時間を戻せるなら、自分の逃げている時まで戻して、逃げる通路を変えたかった。
唇の皮を突き破るのではないかと思うくらい、唇を噛み締める。いや、いっそのこと血が出てくれたほうが、自分をとことん痛めつけることができたほうがすっきりする。
あいつだけは巻き込まないって思ってたのに、思いっきり巻き込んじまってるじゃねぇかよ。
―キャプテンも、なんで俺のこと無視しなかったんだ。
無視してりゃ助かったのかも知れねぇのによ、バカかよ。
つい、そんな事を思って、キャプテンを殴った。女にも容赦しないから力がこもっていたが、キャプテンは怒りも悲しみもせず、ただ「へぶしっ!」とだけ効果音のような声を発し、「うち、何かした?」と問いかけてくるような眼差しで俺を見ていた。
キャプテンは平気で顔を向けてくるが、俺は顔を合わせることさえしづらくなり、下を向いて長い髪で顔を隠した。
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