トリップ
「おーい、ケイラー」
何とか顔を上げさせようと、キャプテンは声をかける。全然顔を向けてくれる様子が覗えないので、仕方なく諦めると、急にケイラがキャプテンの手を強く掴んだ。
先ほどの平手打ちより、こちらのほうが痛い。
「あぎゃぎゃぎゃ・・・痛い!強すぎや!」
「聞けよ」
落ち着いた声で、ケイラはキャプテンの耳元で喋る。
「身の回りで『怪しいな』って思ったら、すぐに言えよ。絶対だからな」
「わわわ、分かった、分かったで離してくれ・・・痛いっ!」
口をガクガクさせながらキャプテンが言うと、ケイラはやっと手を離す。
「1人で背負い込むとか、カッコつけたマネすんなよ」
「果たしてそれはどっちなんだか・・・」
「どっちでもいいだろうが。見られてたって場合があったら、目をつけられるのは確実なんだよ」
「アクション漫画ではありえん事ではないけどね」
「なんでも漫画と一緒にすんじゃねぇよ。物語みたいにうまくいくはず無いだろうが」
(いや、多分うまくいく)
キャプテンはそう思った。これが自分の書いた物語なら、自分のワンパターン作風があるはずだ。そして、うまくいくという確信もある。先ほどの「ワンパターン作風」は、キャプテンの中では必ずあることだ。
それは『どの作品でも、絶対ダークエンドにはならない』だ。