トリップ
「友達が消えてくのって、怖いやん」
「怖いもんかよ」
「怖いって」
本当だった。いくらシナリオと考えても身震いする。友達が減る時に「あと3人」「あと2人」とカウントをかけられるような気持ちになり、身の毛のよだつ。(あくまでもしもの話だが)
何より、仲間が一気に消えた小学3年生の時を思い出させた。
「そりゃ分からんよ、強い、いじめられそうにない子にはさ」
「そういう奴には分からない気分なのかよ、それって」
「うん、その通り」
分からねぇな、とケイラは首をかしげた。そして、そのまま立ち上がる。
「どした?」
「帰る」
「えぇ?怪我とかは」
「痛むけど、止血してあるから」
「大丈夫?途中で倒れても知らんよ」
「いいって、これ以上、迷惑かけられねぇ」
「すでに社会に迷惑かけとんのに?」
「うるせぇな。自己中心的で、どす黒い社会に「迷惑かけました」なんて思ったことねぇよ。お前にだけだっての」
「うちだけ・・・」
『だけ』という言葉がつくと何気に特別扱いされているような気がし、孤独感があった。