トリップ
ターゲット
あれから3日。今日土曜日までこれといった不穏な動きは無かった。怪しいと思ったら少し身構えた(友達がいるときは特に)が、何も起こっていない。
(やっぱり、見られてないっか)
うん、それでいい。
そう思いながらキャプテンは自転車でバイトを続ける。
自分の知る中では、ここに来る前までこんな仕事があるなど知らなかったので、たぶんこれは自分がつくった実在しない仕事なのだ。
キャラクターの動きに適した仕事になるように、この「自転車宅配」というものがあるのだろう。
昭和ではあるまい、今は宅配などトラックでも十分に出来る時代だ。トラックの入れない住宅をこの自転車が行き来すると言う内容は、この物語オリジナルだろう。エリカの学校の、オーディションなどにしてもそうだ。本当にあったら、現実ではおかしい。
自転車宅配なんてマニアックだもんな、とキャプテンは客から押し印を貰う。
それに、今回急に午前中で役交代なんて変だ。きっと、また何かイベント化ハプニングが起こるだろう。
最初はそれくらいと考えていた。
最後の家に品を届けると、キャプテンは近くの公園で持参したおにぎりに噛り付く。米粒の白色が見えないくらいまで海苔で覆ったおにぎりは、トレーニング用の鉄球を思わせた。
最後のかけらを口に運び、そろそろ家に帰ろうかと思った時、体に異変が起こった。
背筋が凍る。