トリップ

「守り屋になったのは・・・」
「その後だ。その仕事やってれば、犯人のことも良くしたら自分で始末できそうだからな」

そう言うことなのか、キャプテンはうつむき気味になりながら思う。顔を上げると、声を小さくして言った。

「おっさん・・・」
「何だ?」
「うち、どっちにも死んでほしくないんやけど・・・」
「同情ならいらねぇ。言っとくけど、今から電話して「来るな」っていうのもナシだぞ。どっちかが生きるには、どっちかが死ななきゃならねぇ。ライオンとシマウマと同じだ」
「そういうもんか・・・?」
「そういうもんだ」

小久保はしゃがみ込むと、キャプテンの目線に合わせて話す。

「いいか?あいつが来たら、お前はこの寺から出ろ」
「え?」
「庭にも入って来んじゃねぇぞ」
「それって、逃げろってことやん」
「そうだ」
「ケイラが来んかったら、うちを殺すんやなかったの?」
「あんなの脅しだ。するわけねぇだろうが。『守り屋』って名乗ってる以上、普通の奴には手出しはしねぇ」

何も言い返せなかった。おっさん、全然悪い奴じゃないじゃん、と言いたくても、口にガムテープを張られている気分だ。

「まぁ、これはこれでよかった」
「?」
「殺し屋って、皆薄情な奴らかと思ってたけどよ、案外いるんだな」

そう言って、キレイな景色を鑑賞するような目で笑う。

「助けてくれた奴のために、わざわざ殺されそうになった奴の所に向かってくる人間ってのはよ」
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