トリップ

死闘




ケイラは懐に入れたナイフに手をかける。前は数人でかかられたが、今回は1人、可能性はあった。

「お前、どうやってアイツを捕まえたんだよ」
「お前が助けられた所を見たんだよ。『キリダ』って苗字の奴を調べたら、出てきたんだ。出没地を確かめてな」

てっきり何かされたのかと心配していたが、キャプテンにも外傷は見られなかったのでホッとする。

「でもよ、アイツ思ったより面白い奴だったぜ」
「は?」
「馬鹿なのか感慨深いのか、分からねぇ」

何を言っているのかさっぱり分からねぇ、と言ってやると、小久保はフッと笑ってかぎ爪を振りかざしてきた。

死闘にいきなりは付きもの。もう少しで首筋をかすめかけたかぎ爪を避ける。背中に体重をかけ、手を地面につけて倒立後転し、素早く立ち上がった。再び振られたかぎ爪をナイフで数度弾き返す。

キン、キン、と戦国映画の決闘シーンに聞く音が響いた。ケイラが「強ぇ」と呟くと、小久保は返すように「ガキにしてはよくやるぜ」と言う。

ガキと聞いて少し腹が立ったが、なんとか押さえて冷静に攻撃を受ける。確かにまだ未成年で、小さいので幼い印象を与えるのを指摘されたのは不快だが、今そんな事を気にしている場合ではない。


< 277 / 418 >

この作品をシェア

pagetop