トリップ
・・・キャプテンSide・・・
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
さっきからその言葉しか呟いていなかった。あの守り屋の男にケイラが殺されかけたのは事実、自分も巻き込まれたことに変わりはないのだが、どちらも責める気にならない。
ケイラが死ぬのはひどく嫌だが、あの男が死ぬのも、罪悪感を感じる。死んで当然、などと言えなかった。
あの男の家族が、姪が殺されたことについて情が移ったようだ。その上に自分だけ簡単に逃がされると、余計に行きづらい。
寺の塀にもたれかかり、腕で顔を伏せた。
「おっさん、残酷そうやったけど・・・」
実はいい人やんか、と言葉に出した。公園で小さい子供に無抵抗だったのは、姪の姿が重なったからなのかもしれないだろうし。最後まで彼女の事を考えていたっておかしくない。
―ああ、急激にいい人になりすぎだろ。
そんなふうだと、どっちも生きててほしい、などと優柔不断なことを考えてしまうではないか。
見上げると、曇った月が晴れて刃のような三日月が見えた。