トリップ
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しばらく伏せていたキャプテンは、門が開く音がしたのに気づく。
顔を上げてみてみると、向こうにケイラが立っていた。ホッとしたと同時に、心の底で「じゃあやっぱり」と付け足した。
「おっさん・・・死んでまった?」
小さな声で聞いてみると、ケイラはうなづかず、首を横に振った。
「知らねぇけど、勝手にどっか行った」
一瞬、顔に曇りがあった。何か隠していることは分かったが、あえて聞かないことにした。いや、ことにしたというよりも、聞きたくないと改めるべきだろう。
疲れ切った顔をして、ケイラはそのまま歩き出す。
「付いて来いよ、お前が知ってる道まで、案内するから」
「ああ・・・ありがと・・・」
2人とも声が低くなり、唸っているようだった。一定の距離を置くかのように、ケイラの後ろをキャプテンがチョコチョコと歩く。自分でもいつもの地鳴りがするような歩き方が、嘘のように思える。
しばらくの沈黙を破ったのは、ケイラだった。
「キャプテンって、苗字はキリダだよな」
「ああ・・・うん」
いきなり口を開くので、キャプテンは不意打ちをくらった気分になる。