トリップ
「じゃあさ・・・下の名前は、ツトムなのか?」
「えっ?」
一瞬、息が詰まりかけた。小学生の頃から知り合いの間ではずっと封じ込めてきた名前を聞かれ、ドキッとする。といっても、恋愛感情のほうの「ドキッ」ではなく、驚愕の意味だ。
「・・・何で・・・知っとんの?」
「あいつが言ってた」
キャプテンは小久保を思い出す。そういえば、おっさんは自分の本名を知っていたっけ、と。
「何が由来か分からねぇのにキャプテンって名乗ってるし、名前くらい知りたくなるだろうが」
「由来・・・」
あだ名なら、いいか、と思いキャプテンは置いていた距離を縮めて話した。
「キャプテンの由来は、男子がからかってつけたあだ名」
「?部活、バスケとかサッカーだったのか?」
「いや、そういうことやなくて・・・。小6の時、下ネタで一番爆笑したで・・・。で、『変態の頂点』って意味で・・・」
「キャプテンか」
「うん」
「嫌じゃねぇのか?そう言う風に言われて」
「別に本当のことやし、言われても悲しくないし。なにより・・・」
「なにより?」
「その名前があったで、嫌な記憶が吹き飛ぶ」
「なんでそうなるんだよ」
「だって、笑われとるときに突っ込みいれたときの事、思い出すで、こっちのほうが気に入っとる」