トリップ
「それ・・・」
エリカは悲惨な傷跡に目を開く。だいぶ古いと覗える傷跡だ。
「これは、8歳の時に初めて付けられた大怪我だ」
リクは服を着てまた肌を隠す。
「これ以来プールにも参加したことがない。見られたくなかったからな」
「じゃあ・・・何でうちに?」
「君なら、仲間と同じくらい信用できる」
「その傷・・・どうしたんですか?」
そう聞かれると、リクは迷うことなく理由を話し出した。自分が土岐に出会った事からこの傷の事まで包み隠さず、だ。
久しく本当のことを打ち明けて話す自分が、リクには不思議にも思えた。
「捨て子・・・やったんですか」
「ああ、中国人だったっていうのも、隠してたな」
「信じられんし・・・。警察がそんな事」
「一般人にとってはそうかもしれないが、こういうこともあるってことだ」
酷いな、と口に出しそうになる。
「土岐の姿が、たまに君と重なって見えるんだ。正直で、優しくて、人を信じすぎる」
「アカン・・・ですか?」
「いや、そういうことじゃない。ただ、そこが似てたから、俺も君のことを鬱陶しいと思わなくなっていたのかもな。君も最初は、俺が鬱陶しかったろ」
「それは・・・まぁ確かに。でも、色々分かってくると、やっぱり放っとけなくなって」
「哀れみじゃなくて、貫きたいんだな」
「・・・自分はそうするつもりですよ」
「は・・・。やっぱりか」
リクは困ったような顔であって、嬉しさの混ざった顔になる。
「好きなのはその次です・・・か」