トリップ
鬼子の良心
・・・シュンリSide・・・
「コレガ?」
今回の標的である男の写真を見て、私は言う。キャップをかぶり、少しばかり若く色白の男だ。
「ああ。こいつ、頭が狂ってるんだか、以前にも子供を1人殺して、結局、頭の病気だから仕方ないってことで、軽い罪になってブタ箱から出てきた奴だ」
「ムカツクワネ」
私は呟く。だって本当じゃない。私はソファに座り、長距離用に細工された小型のライフルを磨く。
「何でもこいつ、前に変な宗教団体に所属してたらしくてさ、その子供を殺す前にこう言ったらしい」
「何テ?」
「『神様のお告げだ』」
「馬鹿ミタイネ」
「だろ、馬鹿馬鹿しいだろ」
そうね、と私は返す。
「で、今日お前は、そんな馬鹿を殺す」
仲介業者の男は、標的の写真をひらひらさせた。仲介業者の髪はオールバックにされ、太い1本の銀のメッシュがとても目立つ。
「コンナ奴ヲ殺スノニ、抵抗ナンテナイワ」
「冷たい言い方するなぁ」
男が苦笑する。私は笑わせるつもりはないけど、と言ってやりたくなった。
「イツ殺スノ?」
「今日の午後2時、その時間、標的はテロのために爆弾を仕掛けがてら病院に立てこもる。そこにいる患者は人質になるだろうな」
「病院?」
「産婦人科のある大病院だ」
私は、赤子を入れておくための透明で綺麗なカプセルのような箱を思い浮かべる。
「爆発サセル前ニ、ソイツヲ殺スノ?」
いや、そうに決まってるわよね。私はそう思っていたが、仲介業者は今までにないくらい険しい顔つきで首を横に振った。