トリップ

「動クナ」

私は男の背中に、銃口を当てる。男はビクッとして飛び上がる。

「来ナサイ」

男は怯えているのか、そのまま誘導に従った。被害を及ぼさないために、私は病院の屋上に連れて行く。

ここなら大丈夫だ。私はそう思い引き金に触れたとき、男は急に声を上げた。

「うわぁぁぁ!」

白目をむき、拳銃を向ける。パニックに陥っている。そう悟った私は、男から距離をおくようにして飛びのいた。

男は銃を乱射してくる。弾がたくさん入るように細工されているのか、弾切れする様子は無かった。
入り口近くの物陰に隠れる。頭が狂ってるって、ああいうことを言うのかしら。私は面倒臭くなる。

銃弾が壁にめり込む音がした。乱射された弾の1つが頬をかする。男の呟く声が聞こえた。

「悪魔だ・・・お前は悪魔だな・・・」

悪魔はあんたよ。私は言い返そうと思う。何を思ってこんなことを言っているのだろうという疑問が浮かびかける。

「神の思し召なんだっ・・・」
「バカじゃないのっ!?」

私はカッとして声を張り上げる。日本語ではなく、中国語で、だ。

「爆発テロのどこが神の思し召なのよっ、単なる自己満足じゃない!」
「うるさいっ・・・この悪魔めっ・・・」
「このっ、淫乱宗教者!」

あれ、淫乱って頭が狂ってる人のことを言うんだっけ?まぁいいや。

意味も分からず叫んだ言葉に、私は1度だけ首を捻る。

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