トリップ
生きたお届けもの
電話が鳴って、キャプテンは玄関まで走って行った。電話に出てみると、電話の相手は、バイト先のあの気弱な店長だ。
「あ、店長。」
「あの、休みだってのに申し訳ないんだけど・・・今からこっちに来てくれないかな?他の人は誰も行けなくて・・・」
「ホントですか!?行きます!すぐに行きます!」
土曜日の午後6時だ。暇だったキャプテンには都合がよかったのだろう、大喜びで答えた。
「キャプテン、何の電話や?」
居間のほうからシンゴ(キャプテンの2歳上の兄)が顔を出す。
「バイト先の店長さんから。今すぐ来てくれって電話が来たで、兄貴留守番頼んだで!」
「おぅ。」
シンゴの返事が返ってくると、キャプテンは自転車に乗って店に向かった。キャプテンには兄以外にも弟が2人いるから、兄に留守番を任せたのだ。
―
店に着くと、客らしき男がいた。
50代で後頭部がはげており、そして怯えた表情を浮かべている。太り気味の男は、傲慢さがあるようにもキャプテンには見えた。
「君がか?」
「はい、キリダです。」
キャプテンが言うと、男は震える手で何か温かい物を渡した。
「・・・生きとる・・・?」
見てみると、ぬいぐるみのようなオオトカゲ(30センチくらいだ)だった。愛嬌があるので(キャプテンにとって、だ)多分子供だろう。
「それを・・・この場所まで届けてくれ。」
渡された地図を見ると、ここから少し離れた町の動物園だった。
「あ・・・そうだ・・・。行く時はこいつも一緒だからな・・・!ほら・・・早く行け・・・!」
そのあとに、何やら聞きなれた乱暴な声が聞こえた。
「うるせぇな!分かってる!」