トリップ
この頃はまだ「キリダ」と呼ばれていたが、あることを境に「キャプテン」へと変わる。
中学1年生、夏だった。
友達の男子がアダルト系の本を持ってきて、それを話題に冗談を言い出した時だ。
「あーすげぇ。これEカップぐらいやし」
「ホント、最高。巨乳最高!」
その冗談を聞いたときに、もう思春期に入っていたツトムが思い切り噴き出したのだ。当然、それに乗って周りの者も笑い出す。
「おめぇなんやて!ムッツリか?」
「ごっ・・・ごめん・・・!面白くって・・・ははは!」
「ははははは!エロイなお前!」
軽快な笑い声が響き、エリカもこっそり笑っていたのがツトムの目に入る。
「キャプテンやなお前は!」
「キャプテン?」
そう言われたツトムは首をかしげる。
「何で?」
「いやさ・・・こんな反応、女子って始めてやで、変態の頂点と言うか、リーダーってこと」
周りからは「なにそれー」や「もぉー」といった声も聞こえる。
「じゃ、お前の初のあだ名、キャプテンで!」
その瞬間から、いいぞいいぞ、キャプテン、と歓声を上げるかのような声が上がった。
「キャプテンだー!」
ふざけてツトムがそう言うと、周りからはまるで新しい市長を歓迎するような声が響く。