トリップ

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自分の思い出を一通り思い出したキャプテンは、もう朝になっていると気付き、起き上がる。

(ま、キャプテンって名前は大好きやし、呼ばれてもいいんやけどね)

友達が付けてくれた名前なら、何でも好きだった。しかし、ツトムという自分の本名で呼ばれることにはどうしても慣れない。

当時は自分のように孤独な人間、悲しい影を持つ人はあまり居なかったので、自分がエリカの真似をするようなことは出来なかった。

しかし、こっちに来てからは、何となく自分も人を安心させられるようになったのかな?と思い始める。ケイラは、以前よりも人間らしい感情を取り戻し(ているのか?それとも自分の前だけだろうか?)、シュンリは何でも自分で背負い込まず、相談事があると聞いてくるようになった。

何より、2人ともよく笑うようになったことが、嬉しかった。

それまでもがシナリオなのだ、と思うと何となく悲しくなる。自分がここから消えてしまったら淋しいし、彼らがまた元に戻ってしまうのではないか、何かを抱えたまま生きていくのではないかと不安だった。

ジュマとも、もっと小説を書きたかった。正統な小説を書きたいから教えてくださいよ、と笑い混じりに子供のように言ってきてくれることも、支えだった。

晴れの日差しが差し込み、はぁ、と息をつく。

やっぱり、うちが悲しい時に晴れる・・・。

「なんつーこっちゃ」

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