トリップ
クズとピーマン
・・・ケイラSide・・・
俺はクズと言う言葉に敏感だった。誰かとの会話で、自分に向けられたものでなくても反応してしまう。というのも、ちゃんとした理由があった。
俺は今住んでいるアパートのある区の隣の区で生まれた。不幸にも、俺の仕事場がある所だ。
母親がフランスに留学していた時に出会ったのが、俺の父親で、あの2人は日本に来てから結婚した。
2人は本当に女が欲しかったからなのか、生まれてきた俺に興味を示さずに育てた。俺の名前は外国の雰囲気を漂わすのに加え、「恵み」と「森羅万象」という日本らしい言葉を合わせて「恵羅(ケイラ)」と名づけたらしい。
女用の名前だと気づいたのは、後々だ。
小学校に入っても、その名前や容姿は結構笑われた覚えがある。
気性が荒っぽかったのが教師から気に入られなく、彼らからもまた、興味は示してもらえなかった。
特に酷かったのは5年生の時、解けなかった問題を分からないまま過ごしていると、教師が小さく「こんなのも解けないのか、クズ」と呟いた事だ。多分、俺がこの言葉を嫌う原点はここからだろう。
中学に入り、喧嘩も少しするようになると、当然ながら、周りから嫌われる寂しさも覚えた。
そんな中だったからだろうか、恋愛面では「とりあえず誰かが隣にいてくれればいい」と思って、告白してくるものは誰にも知られないように受け入れた。
携帯小説でよく見る「淋しさを埋める擬似恋愛」だったのだろう。
しかし、大抵が遊び人風(ギャル)だったので、その考えも1年半で壊れた。