トリップ
「なんだよそれ。風俗?」
「ふざけんなよ。殺すぞ」
「冗談言うなって。できないくせに」
「できるんだよ。悪いけど、何度もやったから」
仕事でな。
俺は男に向かって言う。そんな俺を、男は「ふぅん」と言いながら平然と見ていた。
「悪い事聞くけどさ、お前、人殺したって本当?証拠あるの?」
「それは・・・」
言って何になるんだよ、と聞くと、男は「仕方ないかぁ」と呟き、言う。
「俺さ、殺しの請負の仕事してんの。情報伝達係もちゃんといるんだけど、肝心の実行犯が見つからないんだよな」
それを聞いて、俺は殺した男を思い出す。
ああ、そうか。こいつも窓口の奴なんだな、と。
「証拠ならあるぜ。俺もその仕事してたからな」
男にしか見えないように、俺は血のついたナイフを出した。
「嘘だろ・・・マジかよ」
「マジだって。ガキがするわけないって思ってただろ」
「うん、思ってた。こんな非行気取ったっぽい中学生が殺し屋なんて」
「高校生だって、何度言わせんだよ」
わざとかよこいつ。
溜め息をつくと、男は「できればうちに来て欲しいんだけどなぁ」と頭を掻く。
「仕事してるってことは、雇い主はいるだろ」
雇い主と聞くと、あの自分を殺そうとした男を思い出す。