トリップ
【最終章】
「三つ」の文字
「な・・・なにこれ・・・」
喫茶店に行ってから数日後だった。
久々にノートを開くと、飛び込んできたのはとある「三つ」の文字。それは、最初は早く訪れて欲しかった文字であり、今では、ずっと来なければいいと思っていた文字だった。
【最終章】
そう、もうすぐそこまで、ここの生活との別れが来ている合図であった。
あと何日、何週間ここにいられるか分からない。
そんな恐怖がキャプテンを襲う。
―
「あ」
ジュマが集いの場の中で一言呟く。
「どうした?」
休日で、仕事も無く子供たちと戯れているリクは、ジュマの声に顔をその方向に向ける。
「いや、イカそうめんを焼いていたら、不意に同じ部活の女の子のこと思い出しちゃって」
「・・・なんでイカと関連するんだ」
「今回彼女が書いている作品、題名が【スルメの無力】って名前だったから。印象深くって」
「変な名前だな」
「物語は、素敵ですよ。変な人だけど、すごい人なんです」
「ジュマは、誰に対してもいい所しか見ていない」
リクに言われると、ジュマは子供たちの昼食用に焼いていたイカをさらに盛り付け、照れながら笑う。
「その人は、自分の思ったことをそのままお話にしちゃうんですよ」
「簡単そうじゃないな」
「はい」
皿を運ぶと、ジュマは「早く読みたいなー」と呟いた。
「あの人が転校とかしちゃったら、ちょっとだけ、学校生活がつまらなくなりそうです」