トリップ
その瞬間、2人は素早く動いた。
見えないほど早くはないが、男と比べると、ケイラは圧倒的に素早く、動きが俊敏だ。
(さすが絶対的身体能力者・・・。)
そんな事考えている場合ではないが、思わず考えてしまう。
取り合いずこそこそと隠れて、ケイラが勝つ事を祈ることにした。
隠れて逃げると言う事は、キャプテンが国語の次に得意な事なのだ。
(こうして見ると・・・ケイラもダテで殺し屋やっとるわけやないんやな・・・)
チビだと思っていたが、大柄な男相手に互角で渡り合っている。
キン、キン、と、金属の弾き合う音がする。
光に照らされたナイフたちは、弧を描いて綺麗に光っていた。刃が光った時のみ、どこで人が動いているのかが把握できる。
2人が止まったとき、戦闘の激しさを物語る傷が見えた。
男の方には、顎の下や腕、足などを切られ、ケイラの方は息は切れていないが、額や頬に傷がついている。
(・・・これ本当に三次元の殺し合いか?)
キャプテンは、2人の様子を驚きの目で見る以外になかった。
アクション映画ではよく見る光景だが、実際を見ると案外怖い。
しかし、そんな戦闘にも終わりが見えたらしい。男の方が一本しかもっていないナイフをケイラに投げたのだ。
軽くナイフを避けると、勢いよくナイフを男の胸に突き刺した。
「一本しかない武器を、そう簡単に捨てんなよ。」
欠陥を指摘するように、もう失敗はするなよ、と重い指摘をするようにケイラは言う。声からも、その言葉の重さが感じ取られた。