トリップ
リクの焦る顔を目に浮かべ、昼休みにエリカは先生のところに駆けて行った。
訪ねたのは担任の女の先生。
「あの・・・」
「あ、モトジマさん。何?」
エリカを苗字で呼びながら、先生がこちらを向く。
「あの・・・駒南先輩って・・・何者なんですか?」
その質問に驚いたのか、先生が目を丸くする。
「あら、もしかして・・・彼、人殺してた?」
「は・・・はい・・・ッ!」
殺したという言葉に、エリカは言葉を詰まらせる。
しかし、何故か先生は平然とした顔つきだった。
「いいのよ、別に彼は。仕事だから。」
「え?何で・・・教えてください!」
粘り強く言うと、仕方無さそうな顔で先生が言った。
「最近ね、オーディション前によく行方不明になったり、死んだりする生徒がいるのよ。しかもその生徒は、皆有望視されてた子で・・・。で、それに裏社会が関わってるって聞いて、だから、こっちもそれに対策して、この学校に彼を雇ったの。」
「裏社会・・・殺し屋とか?」
「そ。しかも、その人たちは殺し屋よりも更に腕が良くて、情報網も広いから。その集団でも一番腕のいい駒南君を雇ったのよ。」
「・・・。その・・・その人たちってゆうのは・・・何ですか?」
そう言うと、先生は聞きなれない用語を口にした。
「雇えばどんな相手からも守ってくれる・・・『守り屋』よ。」