トリップ
「ジュマは親が交通事故で死んで、施設が嫌だと抜け出してここに来たんだ。頭が良いから、毒作りを教えるのに苦労しなかった。」
「え?教えるって・・・誰が?」
それを聞くと、ジュマは勿論と言いたげにリクを見た。
「リクさんですよ。毒以外にも、戦い方や動きも習得してて・・・完璧に覚えているのも、絶対的記憶力のおかげですね。」
「絶対的?」
「一般人はほとんど知らないでしょうね。絶対的というのは、「得技」というレベルを通り越して、人よりも一部だけ遥かに大きな力の事です。リクさんの場合、一度聞いたり見たりしたことは完璧に脳内に残せるから、「絶対的記憶力」ですね。」
「・・・・」
よく分かる説明だ、とエリカは思う。
そんな力があったら、さぞ勉強嫌いの学生にはもってこいだろう。
ジュマが去って行った後、まだ動かないとリクに言われ、そのままベットに座っていた。
「あの・・・」
「何だ?」
「先輩は・・・何で守り屋になったんですか?」
「っ・・・。」
その質問に、リクは苦虫を噛み潰したような顔になる。
ここでもやはり聞いてはいけない質問だったのだろうか。何故か知りたいと思ってしまい口が動く。
「なんか、嫌な事でもあったんですか?」
「ない。何でそんな事聞くんだ」
「・・・悲しそうに見えたで」
リクは一瞬疑問に思ったような顔になると「そんな馬鹿な。隠してたはずだ」と言っている様な顔になり、自分の手を見る。