トリップ
部活時間、エリカはまだ部活には入っていないため、下校しようと笠を開く。
すると、雨が降っている中で校舎の影に人の姿。
「あ」と、エリカが声を上げそうになった。
「先輩・・・」
リクが立っている。
雨に打たれ、服はビショビショに濡れ、長いクセ毛は顔に張り付いていた。
笠もささずに何をしているのだと聞こうと思うが、何故こうなっているのか何となく理解できた。
先生に「立っていろ」と言われたのだろう。
自分を怪我させた事でしかられていた事に辻褄が合う。
(やっぱうちのせい・・・)
休み時間から何度も呟いている。
あの先生は余程過保護なのか、少しの切り傷でも守れなかった方は結構な罰を受ける。
『君に何かあったら、俺が叱責を受けるんだ。』
叱責とはこうゆうことだったのか。
エリカは今になって「言う事聞いておけばよかった。」と後悔する。
そう思うと放っておけず、リクの所に走って行き、その上に笠をさした。鬱陶しそうにリクが見てくる。
「・・・何しに来た。」
「ちょっと・・・申し訳無かったなと思って。」
「・・・そうか。」
「先輩・・・怒っとる?」
「怒ってない。」
一呼吸してから続けた。「俺のミスだ。」