トリップ

平気そうな顔をしているが、声がいつもより低い。

「声が怒っとる・・・。」
「そんな小さい事で怒るわけないだろ。死ぬわけじゃあるまいし。」

確かにそんな事で死亡するなど大袈裟だ。

「でも傘ぐらい使いやーよ。」
「いらない。手助けは無用だ。」

エリカが寄せてきた傘を無理に除けようとする。さすがにこれは自分のせいだと責任を感じていたのもあり、どこか孤独感を感じさせるリクを気遣ったつもりだった。
しつこくエリカは傘を寄せてくるので、リクは諦めて抵抗をやめた。
雨がさんさんと降る中、2人は一つの傘の中で雨宿りしている。

「何で・・・」
「?」
「何でこうも俺に構うんだ。」
「別に・・・色々と助けてもらっとるし。」
「・・・そうか。」

いつものように素っ気ない一言。
リクが納得いっていない時の言葉なのだろう。
顔がそれを物語っていた。

「それがそんなに気になるんですか?」
「・・・いや、そう言うわけでもない。」

あ、これは嘘だな、とエリカは思った。
一度黙りこくってから答えるリクは大抵嘘を付いている、と集いの場を出る前にジュマが耳打ちした事だ。


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